平易で説得力のある本
行動遺伝学の啓蒙書としては今まで読んだ中では最も人に薦められる本。読んでいて誠実さが伝わってくる。多分筆者は実験の試行を繰り返したりして泥臭い現場も踏んでいるからこそこれほどの内容が書けたのだろう。同業者には動物を観察しているだけの人とか統計を引っ張り出してきているだけの人とかが多すぎる。この種の本を著す人で遺伝子の抽出・特定までやってる現場の第一人者は意外に少ない。それだけでも貴重である。特にベルカーブについては当方は納得できない怪しさを感じていたのでこういう権威ある人が一家言持ってくれると安心する。
細かいことは他の方で出尽くしているからもう加えようがないが、非常に丹念で穏健で説得力のある本なのであらゆる思想を持つ人、本が好きなすべての年代の人にお薦めする。遺伝子とそれが人間の行動に与える影響について興味がある方はとにかくこれを読んでからほかの本をあたって欲しい。
自分をよりよく知るために
タイトルだけ読むと、この本は、偏った生物学的決定論の押し付けか?などとちょっと警戒してしまうところもあるかもしれない(私自身そうだった)。しかし決してそんなことはなく、自分のそして人間の気質のどれくらいが遺伝的に決まっていて、かえにくいものなのか、そして、それを知ることによってどのようにそれに対策をたてることができるのかを行動遺伝学の知見をもとに、科学的に知ることができる本だった。 私自身、成長にしたがって、大きく性格が変遷していったし、正直、精神の一貫性というものに、疑問があったのだが、大きく変わっていった中で、一貫して同じだった性質というのがあり、それがこの本に紹介されていた気質のひとつだった。 その意味で、自分の精神とそのルーツを知るのに大きく役立った。自分探しのためにもオススメだと思う。 また、〜〜性格判断みたいに、ああ私はこういう気質なんだとか考えながら読みすすめていくことができたし面白かった。 著者の研究と現在の遺伝子の研究も垣間見ることができたし、気質のほかにも知能、体重、同性愛など興味深い分野の行動遺伝学や他の研究の知見についても大変勉強になった。 ぜひオススメの一冊である。
今夜もスナック菓子を手にしてしまった人へ
「人の性格は生まれつきか、環境か」という命題に明らかに「生まれつき」と答えているようなフリをしていて、その実、やはり本人の決意と努力によって変わることができると説いている。「気質」を姿勢と情動だけではなく、行動にまで広げて、分析する。アルコール、タバコ、スナック菓子、鬱、暴力といったやめたいと思っているのにやめられない。それはなぜか。遺伝子で決まっているのだ。ところがこれらを克服する手段がある。化学療法、セラピーだけではなく、ただその行動のメカニズムの知識さえあれば、自分の行動を抑制することができる。 著者はパーソナリティの遺伝的ルーツを理解することは、自分自身を発見し、他者と上手に関係を結ぶことに繋がると言う。子どもへの愛情、環境整備のプレッシ!ャーから解き放たれ、親の理想を子どもに当てはめようとするより、子どもそのものを理解するほうがうまくいくとわかるだろう。またそれはそのほかの人間関係にも役に立つ。
一般向けの分子生物学書
人の性格にも遺伝子が関与している。性格は生まれた後の環境で決定するものとばかり思っていた私には,引き付けられる内容でした。ヒトの性格には司書タイプと証券社員のタイプがあって,これは本人の努力では変えられない生まれつきの形質だそうです。その他,麻薬やたばこに溺れやすいタイプとそうでないタイプがあるのを御存じでしたか?Sexですら遺伝子に操られているなんて!! 人間はよく下等動物をみて本能によって動かされていると言ってますが,ヒトも遺伝子によって行動や性格が実はコントロールされているのです。一読をお勧めします。人生観がかわります。 他人の見方が変わります。
草思社
やわらかな遺伝子 女と男のだましあい―ヒトの性行動の進化
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